平成アーカイブス  【仏教Q&A】

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【仏教QandA】

家族だけでお経を読む方法

お勤めの意義と仏事の実際

質問:

 はじめまして 三重県に住むもので四十九日までの七日ごとの法要(言葉をまちがっていたらすいません)について教えていただきたくメールさせていただきました
 私は先月15日に母を亡くしました
 我が家は核家族でお葬式を出した事がなく、お通夜などは葬儀屋さんに色々聞きながら無事に何とか終えることができたのですが、法要や仏さんのお世話といったらおかしいかもしれませんが、とにかくわからないことだらけなのです
 田舎にご先祖のお墓はあるのですが田舎自体(鹿児島の奄美大島なのですが)宗派にこだわらないところらしく、母が亡くなって葬儀屋さんがきて宗派を聞かれてわからず、あわてて田舎へ電話したら「どうも浄土真宗らしい・・・」という返事で(後でお坊さんに聞いたら間違いはなかったのですが)そんな調子なので父も私もだいぶ困惑いたしました
 ですからもしご無礼がありましたらそれは無知ゆえですのですみやかにその過ちを注意していただきたいと思っていますのでどうかお許し下さい

 本題にはいらせていただきます 私や父は仕事をしており、また時間も不規則なため四十九日の法要にはお坊さんにきていただきますがそれまでの七日ごとの法要はお経のテープを流しながら家族だけで拝むことにしました こういう場合の拝み方の一連の手順を教えてください

 テープには「阿弥陀経・念仏・添引和讃・回向・御文章・正信偈・念仏・和讃六首・回向」と入っているのですがすべて流すものなのですか?それともこのうちのどれかの節だけでよろしいのでしょうか?

 どうか教えてください

返答

 厳しいご縁でございましたが、辛いご縁もしっかり受け入れ、大切な宝とするのが仏法の智慧、と聞かせていただいております。

◆ お経を読む心得

 仏縁は、葬式を出す出さないに関わらず、既に私たちに深く根付いているものです。なぜなら、仏教は、人間が本当の人間になっていく道を説くものだからです。私が本当の自分と出会い、尊い人間としての道を全うする境涯とその方法を、長い歴史を通して求めてきたものだからです。

 ご質問を読ませていただく限り、今まで意識して仏縁を尊ぶことが無かったように思われますが、これからはしっかり仏法を聞き開き、今後の人生を生き甲斐のある、そして死しても悔いの残らないものにしていただきたいと思います。
 それが、先に往生されたご先祖様がたを敬い、本当のいのちを受け継ぎ、いつまでもご縁を尊ぶ最大の供養につながることは言うまでもありません。(供養の心得につきましては、「供養」について、もしくは「父母のために念仏したことはない」の真意 を参考にして下さい)

 お念仏のあるところ、お浄土は実に身近なはたらきと味わうことができます。お経を読むという行為は、そうした意義を生活習慣として定着する素晴らしい勤めとなります。「勤め」ですから、自分の気の向いた時だけ読む、というのではなく、勤めて習慣づけてゆく努力が大切です。仏縁を尊ぶ時はもちろん、仏縁に背きそうになった時こそむしろ必要なことです。「七日ごと」というだけではなく、毎日の読経を心がけましょう。
 七日ごとの法要や月忌勤め、忌明けや一周忌等の法要は、なるべく多くの参詣者を集め、仏法を聞き開く機会を施す場なのです。

 実際のお勤めは、僧侶に指導してもらうのが一番ですが、近年はテープ・CD等でおぼえられる方も少なくありません。これでも良いと思いますが、機会を見つけて寺や別院・本山などに参詣され、大勢で読む素晴らしさも体験されてください。

◆ 読経の環境

 それではまず、お経を読む環境を整えて下さい。

 できましたら浄土真宗本願寺派仕様の仏壇、もしくは一般形式の仏壇を購入します。仏壇中央には御本尊として阿弥陀如来を安置するのですが、御姿としての「尊像」(絵像や木像)、もしくは本願成就の名のりである「尊号」(南無阿弥陀仏の文字)と、左右脇掛(わきがけ)を、本山からお迎えするのですが、各別院・教務所やご縁の寺院を通して頼むことになります。
 様々な事情で仏壇が用意できないときは、「尊像」や「尊号」の掛け軸のみ、もしくは、三つ折れになった「尊号」「尊像」を安置します。
 仏壇を購入すれば、各種の荘厳もついてきますが、御本尊だけの場合も荘厳として「香炉(こうろ)」「花瓶(かひん)」「蝋燭立(ロウソクたて)」は出来る限り用意して下さい。これらを本尊が隠れない位置に置きます。なお、「香炉」は真中、「花瓶」は左、「蝋燭立」は右側です。

 後は、「経本」、「御文章」、「鈴(りん)」を用意しますが、これも仏壇を購入すればセットでついてくるようです。ただし経本は、ご自分で見やすい本を選ぶことも大切ですから、[浄土真宗の簡単なお経] を参考にして下さい。
 ちなみに『本願寺出版社』(〒600-8501 京都市下京区堀川通花屋町下ル 電話 075-371-4171 ファックス 075-341-7753)からは直接取り寄せることができます。
 特に『日常勤行聖典』は見やすくて解説も丁寧ですし、『浄土真宗 聖典 ―勤行集―』は、和讃全てが網羅してありますので、この二冊が整えば、一般門徒としての勤行は充分でしょう。

 また、供物(くもつ)は先の「灯(蝋燭)」、「華(お花)」、「香(香炉)」の他、水と、仏飯などの食物があります。
 水は「華瓶(けびょう)」に入れ、樒(しきみ)などの青木(ここには花は入れない)をさし、上卓(うわじょく)に一対にして置きます。湯のみ等の器は用いません。
 仏飯は仏飯器に蓮の実の形(ドーム型)に盛り、ご本尊前の上卓か専用の仏飯台に置きます。できたら二服一対で供えます。また脇に親鸞聖人や上人の影像がかかっていれば、そちらにもお供えします。朝一番に供え、昼になる前にお下げするのが原則ですが、家庭の事情がありましたら臨機応変にして下さい。
 以上が普段のお供えですが、法事には「餅」「菓子」「果物」も供えます。もし供笥(くげ)や高杯(たかつき)があれば、その上に一対にして供えます。なお、普段でも頂きもの等があれば仏壇に供えます。
 一般的に肉魚など「生臭物」のお供えは避けますが、これは釈尊ら出家者にとって戒律上問題になることを仏壇の前ですることは避ける意があるからです。しかし、『十誦律』三十七巻には、「我、三種の浄肉を啖うを聴す。何等か三なる。見ず、聞かず、疑わざるなり」 [意訳:私は次の三つの条件が満たされるなら、それを浄肉として、(比丘たちに)食べるのを許そう。すなわち(その動物が、自分のために殺されるのを)見なかった肉、(自分のために殺されたと)聞いていない肉、またその疑いのない肉である] とありますから、店で売っている肉魚ならお供えに不都合はない、とみてよいでしょう。積極的にお供えする必要はありませんが、参詣者から供物としていただいた場合はお供えされてもかまいません。
 仏にお供えした食物は、そのお下がりをいただくことも重要です。私たちは、日々如来より尊いいのちを恵まれていることを学び、ともども感謝させていただきましょう。

 浄土真宗では位牌は用いないのが原則ですが、地方によってはまだ用いているところもあります。故人の法名や俗名や命日は過去帳に記入し、普段は仏壇の引き出しにしまっておき、命日にはこれを広げて過去帳台に乗せます。過去帳も御本尊を隠さない位置に置きます。なお、過去帳の前に水や食物は供えません。

※ [仏壇の荘厳(飾り方)] にも詳細を記載してあります。

◆ 読経の実際

 経本・御文章・念珠は畳など足を踏む場には直接置きません。経本は経卓(きょうじょく)があればその上に置き、参拝時には膝の上か、鞄やハンカチ等を下に敷きます。

 蝋燭に火をともし、線香を香炉の長さに合わせて短く折り、火をつけ、炉に横にして供えます(浄土真宗では線香は立てません)。
 法事などで焼香する場合は、香を一回だけつまんで、そのまま(額におしいただかない)焼香します。もちろん香炉の中には火種の焼炭を入れておきます。
 香を焚いたら合掌し念仏を称え、おもむろに礼拝します。この時必ず念珠(数珠)を用います。念珠は普段左手親指と他の四指の間にかけて持ち、合掌時には右手も同様に通し、指を伸ばします。
 礼拝の後、経本を両手で持ち、額のところまで押し頂きます。

 読経につきましては、購入されたテープに「阿弥陀経・念仏・添引和讃・回向・御文章・正信偈・念仏・和讃六首・回向」が入っていると書かれてみえますが、浄土真宗でまず読むことをお勧めするのが『正信偈』(正信念仏偈)です。
 これは親鸞聖人の主著『教行信証』(顕浄土真実教行証文類)行巻の最後に示された讃歌で、浄土真宗の要が顕されたお歌です。これは単独で読むのではなく、第八代蓮如上人のお勧めで、『正信偈・念仏・和讃六首・回向』を合わせて読むように制定されています。読み終わったら合掌礼拝して、さらに『御文章』(蓮如上人のお手紙)を読みます。
『和讃六首』につきましては、本山や別院では毎朝六首ずつ繰り読みをします。テープではその最初の六首のみが収められているのですが、『浄土真宗 聖典 ―勤行集―』には全ての和讃が掲載されています。ただし、最初の六首はよく使いますので、まずこの和讃は読めるようにしておいて下さい。
 テープに入った『阿弥陀経・念仏・添引和讃・回向』も一通りの流れで、やはり合掌・礼拝後に『御文章』を読みます。

 経本には『讃仏偈』や『重誓偈』も載っていますが、これは節をつけずに読みますので、テープに収められることは少ないのですがよく使われます。他にも『十二礼』や意訳勤行がありますので、機会を見つけて学んでみて下さい。

 読経が終ったら灯明を消しますが、口で吹き消したりはしないで、芯切り箸や専用の蓋を用いて下さい。ちなみに焼香時に焼炭に火をつける時も、口で吹いて火をおこすようなことはせず、自然に燃え広がるのを待つか、うちわ等で注意して仰いで下さい。


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浄土の風だより(浄土真宗寺院 広報サイト)