還浄された御門徒様の学び跡


聞法ノート 第一集 31

母の遺した歌 一首

【浄土真宗の教え】

 母九十二才のとき書遺した歌

平成元年十月

有リガタイヤ 有リガタイヤ
南無阿弥陀仏
南無阿弥陀仏「ノ」
舟ニ乗り
今日コソハ
弥陀ノ出舟カナ

マツヱ書 九十二才

 榮三サマ

 命終が十一月十八日、その一ヶ月ほど前に母が私に書遺した。いはば辞世の歌である。
 母はそのとき少し恥じらいながら、「榮三、これつくったで。おまえにな。もうながいことないでなあ。」と渡してくれた。ノートの一枚に鉛筆で大きく書いてある。
 歌の中、括弧をつけて書かれた「ノ」は阿弥陀仏のすくいの手の中で安心して行くんだよという母の強い安心がこめられていると思う。
 また「今日コソハ弥陀ノ出船カナ」とあるが、その時、わたしは「『弥陀へ』とちがうの?]と言うと、母は「そうやな」といって訂正したが、「弥陀」を浄土と受け取った自分の理解でそう言ったのであるが、母は「弥陀」は、弥陀同体の意味を込めて「弥陀ノ」と咏ったのではないか。今はそのように思っている。

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[釈勝榮/門徒推進委員]


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