平成アーカイブス  【仏教Q&A】

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【仏教QandA】

仏教徒とチャペルでの結婚式

質問:

私は宗派を問わない仏教徒ですが、チャペルにて結婚式を挙げてもよいのでしょうか?(相手方の希望で)
私自身、形式的なことにはこだわらないのですが、例の「神に誓い〜」の節がとても気になります。
特に私は、「三宝印」と「縁起の法」を大切にしていますので、絶対神など、釈尊の教えに反するような事には敏感になってしまいます。
ちなみに、相手方は無宗教です。

返答

 お察ししますと、きっと相手の方が教会式の厳粛な雰囲気に憧れてみえるのでしょう。しかし、<自分は仏教徒として「三宝印」と「縁起の法」を大切にしている>という思いは、きちんと相手に伝える必要があります。ですから厳密に言えば、打ち合わせの際「私は神には誓いませんのでこの部分は省いてください」と、教会の方にも言っておく必要がありますが、その辺りは妥協して誓うがどうか、ご自分の責任において決定して下さい。

 ところで、仏前結婚式というのは、残念ながら現在なじみが少なくイメージが沸かない方が多いようですが、実際に式を挙げられた方は、ほとんどがその暖かな雰囲気に満足され「他の方にもお勧めしたい」と、感想を述べられてみえます。

 偶然、前日にも結婚式に関する質問が来ていましたが、結婚式は「新たな家庭の宗旨を宣言する儀式」でもありますので、その点、よく話し合っていただきたいと思います。しかし、もし一つにまとまらない場合も、様々な手段は考えられます。
 例えば互いが希望する形で結婚式を二度挙げる、という妥協策があります。これは夫婦を一心同体と見なさず、異なる宗教観を持つ個人同士が価値観の違いを超えて夫婦生活を営む、という結婚形態を宣言することになります。

 家庭において、信心は同じであった方が事はスムーズに運び、衝突があった際もその智慧の導きに肯くことで解決が促されますが、それは強制された中では機能しません。ですからむしろ、無理に同じにせず、個人としての価値観をぶつけ合っていく中で家庭生活を成り立たせていく、という試練をになうのも一つの選択肢でしょう。いずれ日本が多民族社会になっていくことがあれば、こうした選択がめずらしくなくなる事態も考えられます。

 また、「相手方は無宗教です」とのことですが、おそらく無宗教の意味が分かってみえず、単に「宗教を自分の問題として学ぶ機会が無かった」、もしくは「特定の宗教組織に属する事への違和感がある」というだけのことでしょう。もし「無宗教」を本気で宣言するのでしたら、それは「生命の有限性を独自に受け入れ、虚無的な孤独に耐える精神を持つ」ということになり、ましてチャペルでの式を希望するようなことはありません。
 ですから宗教組織云々はいざ知らず、宗教を自分の問題として学ぶ事は必要で、伴侶としてそうした課題に共に取り組みながら、それでもチャペルでの結婚式を相手が希望されるようでしたら、上記の案など色々妥協策が考えられると思います。

 ともかく結婚式は新しい家庭の船出の儀式です。「形式的なことにはこだわらない」と考えられてみえても、形によって精神が表現され、影響も広がる訳ですから、二人でよく話し合い、悔いの残らない形式を選択してみて下さい。


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