平成アーカイブス  【仏教Q&A】

以前 他サイトでお答えしていた内容をここに再掲載します

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仏教 Q & A

仏教の人権論


質問:

 仏教の人権論とはどういうことですか??
何か関係があるのですか??



返答

 一般社会で権利として「人権」の思想が出たのは近代になってからで、仏教の教学が構築されていく長い歴史的の中で見ると、ごく最近ということになります。しかも西洋の思想として輸入された考えですので、仏教教学の延長線上に生まれた思想ではない、ということは考慮しなくてはならないでしょう。

 しかしその思想は仏教にも通じるところであり、共通の認識に立つことが可能であるばかりでなく、権利と義務という取引的な考えの限界や、権利の履き違えによる暴走、といった欠点を補い正してゆく方向性も仏教では見えてきます。

 例えば 人権問題と仏教の教理 でも書きましたが、「この世で最も愛しいのは自分である」という本音を認め、この自己愛を「他人も同じく一番愛しいのは自身である」と気づくことから利他が始まります。その自利利他の精神が家庭から社会に広がっていき、法律制度としても実際の人間の営みとしても完成させていくことが「人権を尊ぶ」ということになるでしょう。

 また「人権」という理想的なものが先にあって、それは「権利として得られている絶対的なもの」、「権力者に絶対に確保させるべきもの」という受身の立場で考えていては、むしろ自分たちの社会を圧迫させるだけになってしまいます。

 人々が差別されたり、苦痛・苦悩を抱え込み、悲しみに暮れているその現実・現場の中で、共に苦難を背負って歩んでいることを確かめ合い、それに対して「私は何か出来ることはないだろうか」「自分こそが家族や他人の人権を踏みにじっている加害者ではないか」と問いつづけていくことが「人権を尊ぶ」ことなのでしょう。仏教はあくまで現実の苦難を解決する過程において意味をなしてゆく教えなのであり、何か高邁な理想を振りかざし自他に押し付ける思想ではありません。


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