平成アーカイブス  【仏教Q&A】

以前 他サイトでお答えしていた内容をここに再掲載します

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仏教 Q & A

お香(線香)について


質問:

 簡単な質問ですいませんが、浄土真宗では線香を立てないそうですが、 なぜですか?立てたほうが長持ちするのに、折ってしまうのは何かもっ たいない気がします。

 よろしければ、線香の起源についても教えて頂けないでしょうか。



返答

 供香等の荘厳・作法は、宗派独自の取り決めとして行っていて、 浄土真宗(本願寺派)では線香は立てない、という歴史があり、 これはそうした文化の流れの中で決まっていったことなのです。

 特に常香盤[じょうこうばん]での荘厳が基本にありますので、 それを線香で行うと横にする形になるのです。

 また、立てた方が長持ちするかどうかは状況にもよりますし、 折って横に置いた方が、燃えた後の灰が風で飛び散らないメリットがあります。 火事を出さない為にも立てない方が良いでしょう。

 線香(香)の起源については、 最近ようやく医学の分野でも、香りの効能が証明されてきましたが、 インドでは古来より用いられ、 仏教でも修行や荘厳等に上手く利用する形で取り入れられてきました。

【香】こう
 かおり。香気に富んだ木片や樹皮から製したもので、 インドでは体臭などを消すため、熱地に多い香木から香料をとり、 身に塗ったり衣服や室にたく風習がある。
 仏教では仏を供養する方法として、 焼香・塗香を十種供養・五供養力などの中に数え、 香華と熟語にし、花とともに仏に供養する代表的なものとする。
 原料の香木の種類から栴檀香・沈香[じんこう]・龍脳香・伽羅[きゃら]・ 安息香、サフランの花を圧してつくる鬱金香[うつこんこう] などがあり、 使用法から塗香に用いる香水・香油・香薬、 焼香用の丸香・散香・抹香・線香などがある。
 密教では修法の種類により香を区別し、 それぞれ仏教教理にたとえることもある。
 また法の功徳を香にたとえ、戒香・聞香・施香などと称し、 仏殿を香室・香殿などという。
 出家教団では身を飾る塗香は許されず、 見習期間の僧(沙弥)の十戒のうちに、 身に香油を塗ることを禁ぜられている。

[仏教語大辞典]より

 こうした自然な香りはとても素晴らしいのですが、 「抹香臭い」とか「線香臭い」という言葉があるように、 粗製乱造で大量に作られたまがい物の香は、 臭いだけで香のもつ本来の役割が果たされていない製品も見受けられます。
 ひどいのになると、お経中に鼻の奥が痛くなる線香もあり、 香を買う時は、よく吟味して 不自然な香料が混じっていないものを購入されるといいでしょう。

 なお、浄土真宗本願寺派の香についての用語や 荘厳・作法についての詳細は以下のとおりです。

◆常香盤[じょうこうばん]
香型[こうがた] を用いて抹香を灰中に蛇行させてなかば埋め、 その一端から燃やして、常に香気を立てるようにした台付きの香炉。 『考信録』に「本堂の常香は昼夜間断[けんだん] なし」とあり、 阿弥陀堂では平常、前卓[まえじょく] に代えて用いる。
◆香炉[こうろ]
 尊前に香を焚くのに用いる器。 香を薫[くん] じて供養するのは、インドでは古来行われており、 『大経』巻下には「散華焼香」とある。
 香炉には金香炉[かなごうろ] (金属製)と 土香炉[どごうろ] (陶磁器製)の二種類がある。 金香炉は焼香のときに用い、入子[いれこ] に炭火を埋め込み、 沈香・五種香などを薫じる。 土香炉は燃香[ねんこう] のときに用い、 抹香または線香を横にして燃やす。 平常は、香炉台の上に金香炉を置き、 その手前に土香炉を置いて燃香する。 二つの香炉を用いるのは、室町時代の記録にも見える。 三本の脚のうち一本を前面に置く。
◆火舎[かしゃ]
香炉の一種。もと真言密教の燃香器で、 火舎と華瓶一対の荘厳形式は鎌倉時代に広く行われていた。 古くは炉の上に直接蓋を置いていたが、 現用のものは甑[こしき] を重ね上下二重に作られている。 三本の脚のうち一本が前面に出るように置く。 他派では火舎香炉ともいう。
◆香盒[こうごう]
香を入れる蓋つきの容器。

◎供香[ぐこう]
 供香は、仏前に燃香[ねんこう]または焼香[しょうこう] することをいう。
 燃香は、勤行[ごんぎょう] の有無にかかわらず、 常香盤または土香炉に抹香[まっこう] で供養することをいう。 焼香は、法要や儀式にあたり、仏前などにおいて金香炉に沈香・ 五種香などを供養することをいう。
 法要の場合は、点火[てんか]・点燭[てんしょく] のあと御本尊前より 両脇壇。両余間へ順次に各尊前に燃香する。 内陣や余間などの前卓で焼香をする場合は、 あらかじめ金香炉を香炉台よりおろし、 土香炉と置きかえて手前に置く(これを転置という)。 金香炉の蓋[ふた] を左側に、香盒[こうごう] を右側に置いて、 入子[いれこ] (金香炉のなかに火を入れる器[うつわ] )を火に入れておく。 この場合も土香炉には燃香しておく。

@抹香は線香[せんこう] で代用してもよい。 線香は立てずに適当な長さに折り、必ず横にして供える。
A焼香をする場合は金香炉を用いる。 ただし外陣では土香炉を用いてもよい。
B燃香が行われている香炉には焼香しない。
C焼香しない場合は、金香炉の蓋をして土香炉と置きかえる。 また香盒は撤去する。
◎焼香[しょうこう]
 焼香するときは焼香卓[しょうこうじょく] の手前で立ち止まって一揖[いちゆう] し、卓の前に進んで着座する (膝付または薄縁[うすべり] がある場合は、その上に着座する)。 次に、香盒(香を入れる器)の蓋を右手でとり、右縁[みぎふち] にかける。 香を一回つまんで香炉に入れ、香盒の蓋をして合掌礼拝する。 礼拝が終われば、起立して右足から後退し (膝付または薄縁がある場合は、起立して右足から下りる)、 両足を揃えて立ち止まり、一揖して退く。
 なお脇壇や余間などで香炉の位置が高い場合や、 そのほか会館などで高い焼香卓を依用している場合は、 起立したまま焼香する。 また、膝付または薄縁がある場合は着座してから合掌礼拝し、 ない場合は起立したまま合掌礼拝する。

@焼香の準備をするとき、三具足[みつぐそく] または五具足[ごぐそく] などの金香炉の蓋は、あらかじめ香炉の左側に置き、 香盒は香炉の右側に置いておく。 また、焼香卓を用いる場合は、香炉の手前に香盒を置き (置けない場合は、香炉の右側の適当な場所に置く)、 香炉の蓋は用いない。
 いずれの場合も、香炉のなかには炭火を用いる。
A内陣において、脇壇および低い焼香卓などの前で焼香する場合、 原則として膝付を用いる。
B中啓を保持しているとき、正座して焼香する場合はひざの前 (膝付があるときは膝付の上)に横一文字に置き、 起立したまま焼香する場合はえり元にさす。
C柄香炉を保持しているときは、香炉の部分を前方にして、 卓上の右方にたてに置く。 卓の上が狭くて置けない場合は、 中啓を半開きにして畳や敷物など上に置き、 その上に香炉の部分をのせて置く。

【浄土真宗本願寺派 法式規範】より

(参照:{仏壇の荘厳(飾り方)「#香炉」}


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