1993年に1巻が出版されて、今でも根強い人気がある『ブッタとシッタカブッタ』(1〜3巻)は、所謂「いやし系」のマンガとしても注目を集めたが、このたびその姉妹編として『ブタのいどころ』が発売された。
前シリーズとほぼ同様のキャラクターであり、四コママンガとしての体裁は同じだが、24の章に区切ったことにより、それぞれのテーマがより明確になり全体的に歯切れが良い印象を受ける。
「目標が見えないとか 何が正しいのかわからないってことは・・・ 世の中や人生に問題があるんじゃないかもしれんぞ。
自分に起きていることや 人生をどう見てるかってことが問題なんじゃないのかな?」
こうしたことを「ていねいに確認してみないか」とブッタ(ブッダとは違う)に言われ、シッタカブッタは自らの考えに潜む矛盾点に気づいてゆく。
各章のテーマを紹介すると――「競走」、「理想」、「他人の目と自分」、「所有」、「嫉妬」、「痛み」、「鈍感」、「恐怖心」、「退屈」、「我を忘れる」、「愛とおしゃべり」、「自分を偽る」、「嘘」、「情報」、「知識」、「希望」、「努力」、「自由」、「神」、「反省」、「集団と個人」、「目標」、「日々是好日」となっていて、読者は各章ごとに新たな視点を得る(もしくは得たように錯覚する)ことになる。
また今回は、前シリーズにはない「神」や「団体」についての考えが述べられる。
「神や団体と一体化すると自我[エゴ]が消えた気がして心は楽になるが エゴは神や団体にすりかわっているだけである」
こうしてすりかわったエゴだが、「集団と個人」の章では無自覚な集団の末路を示していて興味深い。
ただ、前回のシリーズもそうだが、この集団と個人の関係について、個人が集団から自律することは述べられているが、自律した個人が集団にいかにアプローチするか、というテーマには積極的に触れられていない。
たかが四コママンガにそこまで要求するのは酷、と言われるかも知れないが、これは上質のマンガであるだけに、もう一歩を期待してしまうのだ。
ただ、こうした期待を述べれば、ブッタは「他人に期待するのではなく、今すぐ自分でしなさい」と諭すだろうが・・・