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【十界モニター】

統計の落とし穴

― 良心的なアンケート調査など滅多にない ―

 意思疎通の問題

 アンケートで、「現状に満足していますか?」と問われたら、皆はどう回答するだろう。
 学生の頃から私はこうした問いに対してつねに「×」とつけてきた。なぜなら、現状に満足することは停滞を意味すると思ったからだ。自分自身にも、私を取り巻く環境に対しても、つねに現状打破を目指す姿勢こそが今を生きる実感≠ナあったし、新たな自分を見出すことは何物にも代えがたい喜びだと感じていたからだ。私の「×」はそうした思いを込めて書いたものだった。

 ところが後に、この設問は別の意図で発せられたことを知る。社会的・環境的な満足度を量るアンケートだったのだ。つまりこの回答で「○」が多い場合は、その国の教育環境や家庭環境が良いと判断され、「×」が多ければ、それらの整備が遅れ、希望を持てない状況にあると弾じられるのだ。そうした意図だと解っていれば私は「○」とつけていただろう。不平不満を漏らさなければならないような劣悪な状態ではなかったからだ。
 日本人の多くは私同様「現状に満足している」とは答えにくい気質を持っているのではないか。「満足」が停滞を表すことを敏感に感じとっている人も多いと思う。

 このように、アンケートをする際には、設問意図が回答者に伝わっているかどうか検証しておくことも必要だろう。

 3種類の嘘

 上記の例は誤差程度の可愛いものかも知れない。しかし、世に行われるアンケートの大半は、意図的な情報操作が含まれているから気をつけなければならない。それは政府発表のアンケート結果と民間の統計が同じであることがほとんどない事実を見ても明らかだろう。また新聞社によっても結果は大きく違ってくる。設問の仕方によって自説を賛成させやすく導くことも簡単にできるし、誰に対してアンケートを実施するかによっても結果は違ってくるからだ。新聞社は常々自社の意図に沿う事件を大きく取り上げ、日々社説を掲載している訳だから、購読者は常々彼らの意見に染まってしまうため偏りが出るのだ。つまり社のアンケート結果は、その社の偏りを現しているといっても過言ではない。

嘘には3つの種類がある。嘘、真っ赤な嘘、そして統計だ。
(ベンジャミン・ディズレイリ)

 普通の嘘と真っ赤な嘘は、きちんと検証されたら必ずばれる。普通に嘘をつけば信用を失うだけだ。真っ赤な嘘を信じた政治家は大恥をかいて失脚した。長く繁栄することを願うならば、普通の嘘と真っ赤な嘘はつかない方が得策だ。正直が一番であることは、大人に成ったなら本当は解らなくてはいけない。

 しかし、統計の嘘だけは滅多にばれることはない。結果の改ざんでさえ、余程のことがなければ外には漏れないし、設問設定によって結果を誘導することなど日常茶飯事だ。そのため受け手の私たちは良心的なアンケート調査など滅多にない≠ニ肝に銘じて結果を点検する習慣をつける必要があろう。

[Shinsui]

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