[index]    [top]
【十界モニター】

嘘つきは戦争の始まり

 機能不全を起こす嘘

 前回述べたように、人間には悪性・残虐性が深く潜んでいることは、戦争の歴史からも、自分自身への自省からも明らかだ。しかしだからといって戦乱を野放しにして良いわけはない。人類は幾多の平和的機能を構築してきた。しかしことごとくと言って良い程それらを破壊してもきた

 破壊は、小さな嘘から始まる。まさかと思えるほどの小さな嘘からだ。

 小さな嘘が通れば、人は徐々にその悪性を解放する。嘘をつくことが常態化すれば、より大胆に道義を外れてゆく。そして嘘を隠すため更に大きな嘘を重ねているうち、嘘をつくことが巧みになってゆく。「嘘つきは泥棒の始まり」とは良く言ったもので、犯罪のほぼ全てが嘘を起点としている。

 平和構築のための組織や国際機関がいかに巨大で堅固でも、それを作動させる人間が嘘八百では上手く機能するはずがない。活動や会議がお為ごかしの嘘つき大会になり収拾がつかなくなるからだ。

 ある意味、人間が他の動物より突出しているのが、嘘を付く才能であろう。嘘を付くことで頭脳が巨大化した、とも聞く。しかし同時に、嘘を見抜く才能も開発されてきた。嘘をつかないで世渡りする術もある。

 よく「大人は嘘つきだ」と言うが、むしろ子どもの方が嘘つきだ。なぜなら、嘘の後片付けが予想以上に大変なことを、経験で学んでいくからだ。そして遅かれ早かれ、ほとんどの嘘が発覚することにも気付く。回り道になるが、正直に生きた方が得だということに子どもはまだ気付いていない。

 すると、教育の立場から言うと、嘘を付かない教育、嘘を付かせない教育、そして嘘を見破る教育を推奨したい。

 嘘はチェックできる

 正直に生きる習慣ができると、嘘をついていた才能が丸々、前進努力する方向に向けることが出来る。言い訳に使っていた時間を、実力向上のための時間に振り向けることができる。嘘を塗り固める努力ほど虚しい努力はない、ということにも気付く。

 さらには、自他に正直に生きていると、他人の嘘に敏感になってくる。普段から小さな嘘をついているから相手の嘘を見破れないのだ。芸術でも、贋作を見破るには常に本物に接することが必須という。そのためには、自身が本物になること、虚しくない実のある人生にすること、悪性を抱えた自分と真正直に向き合うことが大切だ。

 また、嘘つきはまず自分を偽るという。自己暗示にかけてもっともらしい嘘を、さも本心のように言う。しかし嘘の努力は身体に染み込んでしまう。こうなった人の特徴は色々あるのだが、これを見抜く術が実は宗教にあり、仏教では112項目のチェックリストがある。どんなに巧みな嘘つきも、これを突破することはできない。

 何度も言うが、人間の悪性・残虐性は自身の心に深く根付いている。これを押し隠して他人の言動をあげつらい、利用することで巨悪に発展する。戦争が単なるシステムの問題だと思っていたら、いつまでたっても止まないだろう。

 言い訳を巧みにするのが教育ではなく、本物を見抜き、本物の生き方を求める教育こそが、自身の人生にも、平和な世界の構築にも役立つ教育だろう。仏教ではこれを菩提心という。回りくどいようだが、菩提心の育みこそが人類の平和的発展の鍵を握っている。

令和2年8月15日  [Shinsui]

[index]    [top]

 当ホームページはリンクフリーであり、他サイトや論文等で引用・利用されることは一向に差し支えありませんが、当方からの転載であることは明記して下さい。

浄土の風だより(浄風山吹上寺 広報サイト)