平成アーカイブス  【仏教Q&A】

以前 他サイトでお答えしていた内容をここに再掲載します

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仏教 Q & A

唯識学における世親の位置づけ


質問:

 真宗第二祖の世親は、唯識教学の帰結として「浄土論」を著しました。
そこで質問です。

  1. 唯識の論者・論書は多く存在するのか?(無著、バスパンドの三十論等)
  2. そうであれば、なかでも世親は唯識の代表的な存在だったのか?
  3. 世親の著した唯識の代表的な論書はなにか?(浄土論以外で)
  4. そもそも世親のインド名はなにか?(龍樹のナーガルジュナのように)
以上、気になるので教えてください。



返答1

  1. 「唯識三十頌」の他には「唯識二十論」「三性論」「中辺分別論」「瑜伽師地論」など多数あり、天親(世親)とその実兄である無著により書かれ瑜伽行派の人々によりその後「論書」が多く書かれた。
  2. 唯識は無著が兜率天に住す弥勒菩薩より教わったと言われ、世親によって学派が形成され広がったといえる。
  3. 「唯識三十頌」と「唯識二十論」の両書による。
  4. バスハンズ、バソハンドゥーである。
 唯識に興味がおありなら奈良の法相宗がかなり忠実に唯識を伝えているので、その寺院に学ばれるといいが、俗に唯識8年などと呼ばれており、学びが完成するためにはかなりの覚悟が必要とされる。


返答2

「唯識の論者・論書は多く存在するのか?」とありますが、唯識の主要な論者はマイトレーヤ(Maitreya/弥勒/みろく)、アサンガ(Asanga無著むじゃく、4世紀)、ヴァスバンドゥ(Vasubandhu世親、4〜5世紀)の三人で、アサンガとヴァスバンドゥは兄弟(アサンガが兄で、ヴァスバンドゥが弟)です。

 服部正明・上山春平著『仏教の思想4・認識と超越〈唯識〉』(角川文庫ソフィア)によれば、そもそも唯識思想は西暦200〜400年ごろに成立したとされる『解深密経/げじんみっきょう』という経典の中で初めて説かれ、マイトレーヤという方(ただし、この人は実在が疑問視されているそうです)が『瑜伽師地論/ゆがしじろん』という論書で、アーラヤ識説など重要な教理を『解深密経』にもとづいて説き、さらに唯識思想にとって重要な『大乗荘厳経論/だいじょうしょうごんきょうろん』、『中辺分別論/ちゅうへんふんべつろん』、『法法性分別論/ほうほっしょうふんべつろん』を著されたそうです。

 さらに、4世紀にアサンガが「唯識説とそれにもとづく大乗の実践体系を組織的にまとめた論書」、『摂大乗論/しょうだいじょうろん』、『瑜伽師地論』の要義を解説した『顕揚聖教論/けんしょうしょうぎょうろん』、『大乗阿毘達磨論/だいじょうあびだつまろん』を著し、弟のヴァスバンドゥが『唯識二十論/ゆいしきにじゅうろん』、『唯識三十頌/ゆいしきさんじゅうじゅ』を著しました。とりわけ『唯識三十頌』は、わずか三十の偈頌の中に唯識思想を組織体系化した著作とされ、後世に多大な影響を与え、無数の注釈書を生んだ、唯識思想上最も重要なテクストと言えるようです。

 なお、ヴァスバンドゥ以後の論者としては、6世紀のグナマティ(徳慧/とくえ)、スティラマティ(安慧/あんね)、ダルマパーラ(護法/ごほう)などがおられるが、詳しくは『仏教の思想4・認識と超越〈唯識〉』をご参照ください。
合掌

[相川拓善]



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