平成アーカイブス 【仏教Q&A】
以前 他サイトでお答えしていた内容をここに再掲載します
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質問:
真宗第二祖の世親は、唯識教学の帰結として「浄土論」を著しました。
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「唯識の論者・論書は多く存在するのか?」とありますが、唯識の主要な論者はマイトレーヤ(Maitreya/弥勒/みろく)、アサンガ(Asanga無著むじゃく、4世紀)、ヴァスバンドゥ(Vasubandhu世親、4〜5世紀)の三人で、アサンガとヴァスバンドゥは兄弟(アサンガが兄で、ヴァスバンドゥが弟)です。
服部正明・上山春平著『仏教の思想4・認識と超越〈唯識〉』(角川文庫ソフィア)によれば、そもそも唯識思想は西暦200〜400年ごろに成立したとされる『解深密経/げじんみっきょう』という経典の中で初めて説かれ、マイトレーヤという方(ただし、この人は実在が疑問視されているそうです)が『瑜伽師地論/ゆがしじろん』という論書で、アーラヤ識説など重要な教理を『解深密経』にもとづいて説き、さらに唯識思想にとって重要な『大乗荘厳経論/だいじょうしょうごんきょうろん』、『中辺分別論/ちゅうへんふんべつろん』、『法法性分別論/ほうほっしょうふんべつろん』を著されたそうです。
さらに、4世紀にアサンガが「唯識説とそれにもとづく大乗の実践体系を組織的にまとめた論書」、『摂大乗論/しょうだいじょうろん』、『瑜伽師地論』の要義を解説した『顕揚聖教論/けんしょうしょうぎょうろん』、『大乗阿毘達磨論/だいじょうあびだつまろん』を著し、弟のヴァスバンドゥが『唯識二十論/ゆいしきにじゅうろん』、『唯識三十頌/ゆいしきさんじゅうじゅ』を著しました。とりわけ『唯識三十頌』は、わずか三十の偈頌の中に唯識思想を組織体系化した著作とされ、後世に多大な影響を与え、無数の注釈書を生んだ、唯識思想上最も重要なテクストと言えるようです。
なお、ヴァスバンドゥ以後の論者としては、6世紀のグナマティ(徳慧/とくえ)、スティラマティ(安慧/あんね)、ダルマパーラ(護法/ごほう)などがおられるが、詳しくは『仏教の思想4・認識と超越〈唯識〉』をご参照ください。
合掌
[相川拓善]