川柳というのは、俳句や短歌に比べると読んでいて面白く、「今」を語っているだけに一般になじみがあつい。といって、決して浅い文化という訳でもない。
川柳の面白いところは、一句一句が短いだけに、作者の技量はもちろんだが、選者の目が問題となるところだ。
新聞や雑誌で、面白い句が並ぶメディアは、必ず優れた選者がいる。極端に言えば、川柳集の出来の90%は選者にかかっているのだ。
では、人気投票で選ばれた句はどうかというと、これが案外凡庸なものが多く、分かりやすいが味わいが浅い句に票が集まる。比べて、優秀な選者が選んだものは、他の読者が見逃してしまいそうなところに目をつけて、あらためて読み直すと「なるほど面白い」となる。この「目のつけどころ」が、人気投票では平均化してしまうのだが、これは川柳だけの問題ではない。
現代の文化、例えばテレビの世界では『視聴率』という魔物がかっ歩している。本や雑誌もベストセラーが話題になる。美術や音楽、映画や演劇も、観客動員数が価値判断の基準となる。そして、誰もその基準に逆らわない。
話題になったものはそれなりの理由があるからだろう。しかし、それをまた他のメディアが追っかけ、また話題にする、という芸のなさでは、新たな展開はのぞめない。
ときに時代や大勢に流されず、自分の「目のつけどころ」を試して、異論をとなえてみるのもいいかもしれない。
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