いやあ、驚いた。何もかも驚きに満ちた映画だ。
まずは、日本初のテーマパーク『常磐ハワイアンセンター』(現:スパリゾートハワイアンズ)誕生の裏に、こんなに素敵な物語があったことに驚いた。
もちろんフィクションの部分も多数あるだろうが、常磐炭鉱が閉山に向かう中、起死回生を狙い地元主義の原則を貫いた会社の姿勢には拍手を贈りたい。暗闇で命をかけて黙々と石炭を掘ってきた炭鉱の伝統の中に、フラダンスといういわば世界一明るく朗らかな踊りが入り込んだ時の戸惑いは「かくあったろう」と想像が巡る設定だ。
また松雪泰子の踊りと演技力には驚いた。
表情や振りひとつで過去が語られ、鬱憤の大きさを表現する。そしてテンションの低い状態からスイッチを切り替え、一気にハイテンションで暴れ回る姿は凛々しく感動的だ。特に怒り心頭に発して男風呂に乗り込むシーンは圧巻。思わず「やっちまえ!」と叫びそうになった。
そして何といっても、彼女たちフラガールの踊りの素晴らしかったこと。
私は以前、本物のハワイでフラダンスを見て(自慢にもならんのは重々承知)、客代表で舞台に上げられ必死に躍って喝采をあびた経験があるが(これも自慢じゃないよ…?)、あの本場の底抜けに明るい笑顔が蘇ってくるような素晴らしい踊りだった。もし、「彼女たちはプロのダンサーだ」と言われても、そのまま信用してしまうだろう。実は全員フラは素人。それゆえだろうか、当時の、良い意味で急ごしらえの必死さや息吹が見事に再現された踊りとなっている。
それにしても炭鉱閉山に伴う人員削減≠ニいう過去は、現在の就職状況とも重なり見ていて辛い。
人はどんな状況でも生きていかねばならない。そのためには仕事が必要だ。家族を抱えていればなおさらである。笑顔一杯の彼女たちの踊りの向こうに、常夏のハワイとは違う重い事情がやはりここにはある。
……いや、ハワイにも、フラの笑顔の向こうに、何か別の重い事情があるかも知れない。
すると、やはり笑顔は世界共通の素敵な贈り物なのだろう。
涙をぬぐって、心の底から、アロハ。