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【Oの食卓に花束を】

妙好人讃岐の庄松の苦言

― 法を[]せさせて、我が身を太らせている ―

 とある本に、「京都一条の浄教寺の脇谷覚行の話」として、讃岐[さぬき]庄松[しょうまつ]という妙好人のエピソードが載っていた。


ある時、本山より讃岐の鹽谷[しおや]別院へお説教に派遣されたことがあった。午後のお説教が済んで間もなく、風呂の案内を受け、行ってみると手拭[てぬぐい]がない。手拭を持って来てくれと言ったところ、間の抜けた男が手拭を持って来た。ついでに少し背を流してくれと頼んだら、ものも言わず、ごしごし背中をこすりながら、「うまいものばかり食ろうて、籠に乗って歩き、此奴[こやつ]にくい奴じゃ。よう[ふと]りくさって、鬼が食うたらうまかろう」と小言を言いながら流していた。
 風呂から上がって、あの男何を言うたのか確かめてみたいと思って、浴衣[ゆかた]を着て涼んでいるとことへ、この男が前を通ったので、呼び留め「先ほど背を流しながら何か言うていたが、土地の方言でちょっとわかりかねた。何と言ったのかはっきり言うてみよ」と言うと、その男は「あなたは法を[]せさせて、我が身を太らせているから言うたのじゃ。今日の説教などは一言もこのわしには徹しなんだ」と言ってくれた。この一言は胸へ五寸釘を打たれたようにこたえた。あとでその男の名を聞いたら庄松であった。
 それより我が身の出離ということに励んで如来様のお心を知らせてもろうた。それからは庄松が京都へ来る時は自分の寺へつれて来て、仏法の相談をするのが楽しみになった。


 年末年始というのは食べる機会が多く、当然体重も増す。私自身、普段の不摂生を倍加しての食べ過ぎで、体重計が壊れたかと思うほど驚いたが、讃岐の庄松さんの話を聞いて、さらに我が身を恥じることとなった。

 それにしても、「あなたは法を[]せさせて、我が身を太らせている」とは厳しいお言葉。もしここに庄松さんが居たら、私の姿を見てどんな小言を言っただろう。
「讃岐」といえば真っ先に「うどん」を連想し、元旦早々ブラジル料理の店でスパイシーな鳥の丸焼きを頬張り、肉だ、魚だ、珍味だと、あちこちで食べきれない程の御馳走を振舞われてお腹を抱えている私である……背後から「鬼が食うたらうまかろう」という声が聞こえてくるような気がする。

[Tetsubuta]


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