平成アーカイブス <旧コラムや本・映画の感想など>
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平成21年9月1日
先日(平成21年8月30日)行われた衆議院議員選挙の結果、事前の予想通りというべきでしょうか、民主党が圧倒的な勝利をおさめ、過半数超えの第1党になりました。これは所謂55年体制∴ネ降初めて「選挙による政権交代」が達成されたことを意味します。ちなみに平成5年(1993)の細川護煕内閣は、選挙前後の分裂・連合によって成立した政権に過ぎませんから、今回は日本の政治史に残る民意を現わした選挙≠ナあったわけです。
ここで重要となるのが民主党の発表した「政権政策マニフェスト」です。これを見ると――、
子育て支援として<中学卒業まで、1人当たり年31万2000円の「子ども手当」を支給>、<高校は実質無償化し、大学は奨学金を大幅に拡充>。<年金制度を一元化し、月額7万円の最低保障年金を実現>、<後期高齢者医療制度は廃止し、医師の数を1.5倍に>する。また<「地域主権」を確立>し、<農業の戸別所得補償制度を創設>、<高速道路の無料化、郵政事業の抜本見直し>によって<地域を元気に>するという大盤振る舞いぶり。さらには<中小企業の法人税率を11%に引き下げ>、<月額10万円の手当つき職業訓練制度>。<地球温暖化対策を強力に推進し、新産業を育て>るといいます。
当然、「財源はどうするのか」という疑問が出ますが、これについても<税金のムダづかいと天下りを根絶>することによって、必要経費17兆円の捻出は充分可能であると論じています。全体として<コンクリートではなく、人間を大事にする政治にしたい>という姿勢が国民に支持された理由なのでしょう。
しかしあまりに拙速な方向転換は国家としては混乱を招きます。高速道路の無料化などは明らかに地球温暖化対策とは矛盾する政策ではないでしょうか。
総じて言えば、財政負担の問題は本当はもっと慎重に詰めて論議すべき課題であったはずです。大衆迎合ともいうべきバラマキ政策では財政負担が増すことは眼に見えています。その上、費用対効果が少なければ経済破綻する可能性もあります。当てにしている「埋蔵金」も様々な準備金が含まれていて、軽々に使用すべきではありません。
もし実質的な借金≠増やし続けることで人気を得、現状を乗り切るのであれば後顧に憂いを残すことになります。長く国家・国民に豊かさを提供できる政策であれば良いのですが、一時的に甘い汁を吸ったせいで国家が崩壊する≠ニいうようなことにならないとも限りません。民主党は果たして長期的な展望に立った上で「政権政策マニフェスト」を作成したのでしょうか。
また一番の懸念は外交問題でしょう。覇権を狙う大国主義の嵐が吹き荒れる中、「国連主義」という言い逃れを脱して真に主権を発揮する外交ができるのかどうか、現に行われている民族浄化や文化破壊の暴挙とどう対峙するのか、など問題は山積です。今後の政権に聡明・明確な態度を取ることが求められますが、今のところ民主党は曖昧模糊とした態度に留まっています。国内同様、外交においても<人間を大事にする政治>を貫けるのかどうかが問われます。
結局、40日におよぶ選挙戦の中では各政党とも内政外交の懸案解決に向けた具体的な話はほとんど聞かれませんでした。聞こえの良い大甘政策マニフェスト≠フ連呼でありました。
こうして精神的砂糖漬け状態となったメタボ国家日本は今後どこに向かうのでしょう。国家の軸をどこに置いて価値判断をしてゆくのでしょう。「民主党のお手並み拝見」などと悠長なことは言っていられません。国民ひとり一人が冷静に現実の痛みを学び、自分の意見を持って歴史創造に参画してゆくべき時代となった≠ニ言えるでしょう。そしてマスコミには、こうした小さくとも大勢に流されない信念をもった発言≠拾い上げていくことが求められます。
決して甘くない、しかし希望も大いにある分水嶺に立つ日本。今回の選挙が日本再生の第一歩となるのか、国家崩壊の第一歩となるのかは、今後の個人個人の思惟の深まり度によって決定されてゆくのです。
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