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【平成モニター】

平成21年8月20日

「薬物乱用防止ポスター」募集の意味

― 心の隙間を埋める作業と環境を ―

 小学生に啓発ポスターを描かせるのは

 近年、麻薬や覚せい剤などの薬物乱用が若年層や主婦の間にも広がりを見せつつあり、様々な機関が薬物乱用防止≠呼びかけています。また多くの教育機関も学生たちに啓発ポスターや標語を募集しています。特に今年の夏は、酒井法子容疑者が覚せい剤取締法違反の疑いで逮捕されたり、押尾学容疑者が麻薬と死亡事故に関わる等、有名芸能人の逮捕報道がなされたため多くの注目が集まりました。実際に今現在、ポスターを描いたり標語を考えたりしている真っ最中の小中学生も多いのではないでしょうか。

 こうした啓発活動について、一部では「小学生に薬物乱用のことが理解できるのか」とか、「寝た子を起こすことになりはしないか」という疑問の声もあがるようです。
 確かに以前は「中学生になってから教えれば良い」と考える方が自然であり常識だったのかも知れません。誘惑をともなう問題は小学生には知らせずに済むのなら済ませたいところでしょう。有害無益な知識は決して人生にプラスにははたらかないからです。

 しかし薬物がこれだけ身近に出回り、様々な報道によって薬の効果≠子どもたちも知ってしまう以上、正しい知識と乱用しない心構えを教育しなければならない時代になったと言わざるを得ません。ポスターを描いたり標語を考える際にはこれらを学ぶ必要があるので、今はこうした募集も必要となってきました。

 薬物に親しみを感じさせる報道

 ところで、情報を得る際、現代はどうしてもマスコミの影響が大きく、それだけに各メディアの報道姿勢が問われます。しかし今回は、興味本位な過熱報道(芸能人の裏映像放出)のせいで、正しい薬物の知識を得る以上に、ろれつが回らなくなる∞異常にテンションが高い%凾フ「軽いイメージ」が浸透してしまったきらいはあります。夏休み期間中だったこともあり、子ども達への悪影響が心配です。下手をすれば一連の報道によって、人々が麻薬に親しみを感じたり、覚せい剤に現実逃避的な魅力を感じ、憧れさえ抱いた人たちもいるのではないでしょうか。

 薬物の本当の恐ろしさは、あのようなハイテンションの後にやってくる極端な落ち込み≠ナあり常習性≠ナあり身心の崩壊≠ネのです。しかし報道では、こうした破滅に至る説明は付け足し程度で終わっていたように感じました。そして、驚きの映像∞アジアにも衝撃%凵Aスキャンダラスな内容と興味をそそるようなタイトル連発に私は危機感をおぼえました。今現在、報道を見た小中学生が薬物をどう理解しどのようなポスターを描いているのか、よくよく検証しておかねばなりません。

 根本を解決する

 薬物乱用を防止するためには誘惑に乗る根≠ェどこにあるか知らねばならないでしょう。啓発活動を盛んにしたり、薬物そのものを厳重に取り締まるだけでは乱用はなくなりません。なぜなら教育や取り締まりだけでは限界があるからです。このことは多くの人がうすうす感じていることでしょう。

 たとえば先の酒井法子容疑者など、かつては「麻薬撲滅キャンペーン」に参画していたほどですから、知識としては十分にあったはずです。それでも周囲の影響によって薬物に手を染めてしまったのですから(現在は容疑ですから確定はできませんが)、知っている≠セけでは充分ではありません。また、これだけ世界的に流通が盛んな現在では、麻薬や覚せい剤を完全に取り締まることは物理的に不可能です。

 このように周囲には誘惑が多く、不正薬物も簡単に入手できる今の時代、薬物乱用を防止することは非常に困難に思われます。しかしひとつだけ、遠回りのようで一番の近道があります。それは、ひとり一人の心の隙間を埋める作業を皆で行う≠ニいうことです。見当違いな意見に思われるかも知れませんが、薬物依存の根はやはり心≠ノあります。

 人間は、本心と違うことを言ったり行ったりしていると心と言動の間に隙間が生まれてしまいます。この隙間こそ様々な誘惑が入り込む余地となるのです。これは周囲の期待や圧力や無理解によって、言わされたり、させられることから始まるのですが、これが長期に渡ると自分自身で本心を蔑ろにするようになってしまうのです。すると、存在そのものが虚ろになり、生きている実感が湧かなくなりますから、この解消のために様々な刺激を求めるようになり、手っ取り早い一方策として薬物乱用に走るわけです。

 よく「自分を大事にする」、「命を大切にする」と言いますが、その根本は自分自身の本心と向き合うこと≠ェ基本となります。そして社会的には他人の本心を無視しないこと≠ノ尽きます。具体的な方策としては、できるだけ肯定的な言葉を使って会話を進めることから始めると良いでしょう。回りくどいようですが、心の隙間を埋める作業と環境づくりを、個人から家庭へ、家庭から社会へと展開することが薬物乱用防止にもつながってゆくのです。

[Shinsui]

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