平成アーカイブス <旧コラムや本・映画の感想など>
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平成17年3月1日
このところ、ジャパニーズ・ホラーがブームで、「ザ・リンク」の成功以来ハリウッドでも次々とリメイク版映画が製作されたり、監督やスタッフとして日本人の活躍の場が増えている。じっとりと粘っこい、得体の知れないものに対する恐怖感は日本独特のもので、単なる血なまぐさいホラー(
さて、昔ある時期みな一様に「恐い」と評判だったアニメが『妖怪人間ベム』。そのオープニングに「早く人間になりたい」という有名な台詞が入るのだが、これが今も耳に残っている。製作者側の意図は定かでないが、私にはこれが求道者の自問自答に聞こえてならない――「私は人間だからこそ早く人間になりたい」と。もちろん「うがち過ぎ」と言われればそれまでなのだが。
番組では、妖怪たちは目的達成のためには人を殺めなければならないと分かり、彼らは人間になる希望を断念する。しかし人間たちの側は異形を蔑み、妖怪たちの抹殺を図る。「早く人間に成りたい」と本当に願わなければならないのはまぎれもなく人間なのに、というメッセージなのだろうか。
しかし、アニメの話ではない。今の社会は果たしてこれで人間の社会と言えるのだろうか。「早く人間になりたい」と真摯に願う人間がいなくなれば、もはや恐怖は現実の人間社会にこそある、ということになってしまうだろう。そして、「もう、そうなっているのではないか」との言葉が出たら、その言葉を自らの胸の内に響かせてみよう。
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