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葬儀についての手引き

浄土真宗本願寺派の葬儀式次第

浄土の風だより【仏教資料集】

 正しく葬儀を行う為、以下に式次第の一例と資料を掲載します。

  1. 臨終勤行〔りんじゅうごんぎょう〕(枕経)
  2. 納 棺
  3. 通夜勤行
  4. 出棺勤行
  5. 葬場勤行(葬儀式)
  6. 火屋〔ひや〕勤行
  7. 還骨〔かんこつ〕・初七日法要
  8. 中陰及び満中陰(忌明)法要
  9. 納骨(分骨)について
  10. 仏壇について
  11. 資料(於:声明講習会/山崎昭壽師)
 社葬式次第(一例)


浄土真宗本願寺派の葬儀について

 浄土真宗本願寺派(西本願寺)における葬儀の意義は

 葬儀は故人に対する追善供養回向の仏事や単なる告別の式ではなく、遺族・知友(遺族・親族・知人・友人)が相集い、故人を追慕しながら、人生無常のことわりを聞法して、仏縁を深める報謝の仏事である

と、『浄土真宗本願寺派葬儀規範勤式集』に定められており、その意義にそって、下記の事項に十分留意して、浄土真宗にふさわしい葬儀――つまりは、葬儀は単なる別れの儀式ではなく、また会うことを約束する儀式であることを念頭において行っていきたいと思います。

 なお、当派では本来、葬儀(臨終勤行・通夜勤行・出棺勤行・葬場勤行・火屋勤行・還骨、ならびに初七日法要)は自宅と葬場に分けて行ってきたものであり、定められている規範も、それに基づいて規定されています。しかし近年、特に都市部での住宅事情等により、臨終勤行から初七日法要までほとんどを葬儀会館等において行う機会が多くなり、定められた規範にそぐわないこともありますが、規範の枠に添いながら、また世間一般の俗信や迷信に惑わされることなく、浄土真宗(本来の仏教)にふさわしい葬儀を行っていきましょう。

● 臨終勤行[りんじゅうごんぎょう](枕経)

意 義
 人生の終わりに臨んで、永年お育てにあすかったご本尊に対するお礼の勤行です。このお勤めを一般には「枕経」と言いますが、本来は遺体に対して読経するのではありませんので、やはり「臨終勤行」というべきでしょう。
 必ず仏前(ご本尊前、自宅では仏壇の前)においてお勤めします。
荘 厳[しょうごん]
  1. 仏壇のある場合 <仏壇は閉めずに下記のように荘厳する>
    • 前卓[まえじょく]上は、三具足[みつぐそく]<左から: 花瓶[かひん]、香炉[こうろ]、蝋燭[ろうそく]立て> で荘厳する。
       ・ 打敷[うちしき]は 白か銀色(ある場合のみ)
       ・ 花は 櫁[しきみ]か青木
       ・ ローソクは 白色
    • 上卓[うわじょく]
       ・ 打敷は 白か銀色(ある場合のみ)
  2. 仏壇のない場合 <自宅以外の場合も含む>
     正面にご本尊(ご絵像かお名号)を奉懸(安置)して、三具足=花瓶、香炉、ローソク立てで荘厳する。

○ ご遺体は仏壇(ご本尊)の正面をさけ、左右どちらかで北枕にし(部屋の都合によっては北枕にこだわらなくてもよい)、白服(衣)を着せ、顔を白布で覆い、両手を胸元で合掌(組み合わせ)させて念珠をかける。

● 納 棺

  1. 遺体を納棺後、納棺尊号(「南無阿弥陀仏」等のお名号)を遺体の胸元あたりに入れる。
     (納棺尊号は葬儀終了後の納棺時に入れて下さっても結構です)
  2. 棺には金襴製の棺覆いか七条袈裟をかける。

● 通夜勤行

意 義
 葬儀の前夜に、近親者や友人知人など、苦楽を共にした人々が仏前にあい集い、故人を追慕して、仏恩報謝の念を深め、法義(教え)相続の場とするもので、自宅の仏壇の前でお勤めするのが本来の姿ですが、近年増加した自宅以外の葬儀会館等であれば、荘厳壇[しょうごんだん]の前にてお勤めする。
荘 厳
  1. 仏壇の荘厳(仏壇前で行う場合)
    • 上卓の打敷は 白か銀色
    • 前卓の打敷は 白か銀色
       三具足<左から: 花瓶・香炉・ローソク立て>、 もしくは五具足<左から: 花瓶・ローソク立て・香炉・ローソク立て・花瓶>。花は 赤をさけた生花(櫁)。ローソクは 白か銀色
  2. 仏壇のない場合(葬儀の荘厳壇の荘厳に準ずる)
    五具足もしくは三具足。花は 赤をさけた生花(櫁)。ローソクは 白か銀色。前卓(野卓)を使用する場合は、打敷、水引(白か銀色)

● 出棺勤行

意 義
 本来、葬儀は自宅以外の場所で行うのが原則で、葬場への出棺に先立って、自宅の仏前(仏壇前)において行う勤行のことを出棺勤行といいます。しかし、通夜から葬儀まで葬儀会館等の同一場所で行う場合は、葬場勤行に先立って荘厳壇前(棺前)でお勤めします。
荘 厳
  1. 仏壇の荘厳(仏壇前で行う場合)
     ・通夜勤行の荘厳と同じ
  2. 荘厳壇の荘厳
     ・次項の荘厳壇の荘厳と同じ

● 葬場勤行(葬儀式)

意 義
 葬場(葬儀場)において行う勤行で、仏徳を賛嘆し、故人を偲びつつ、報謝のまことをささげる儀式です。
荘厳壇の荘厳について
 葬儀場でのお飾りは一般に祭壇と言われていますが、正しくは荘厳壇[しょうごんだん]或いは葬儀壇と言います。

葬場における荘厳図


ご本尊安置について
上図にように、荘厳壇の正面中央には、ご本尊(阿弥陀如来のご絵像か南無阿弥陀仏のお名号)を必ず奉懸もしくは安置して下さい。その場合、ご本尊が遺影(写真)や位牌で隠れないように注意して下さい。
 なお、位牌や遺影(写真)は本来、正面をさけて荘厳するのが正しい仕方です。
 また、遺体や遺骨・遺影(写真)・白木の位牌は礼拝の対象ではありません

 さらに近年では、棺を焼香台のすぐ奥に安置する荘厳も多くなってきました。

葬場における荘厳図
 

仏具について
荘厳壇や前卓(野卓)で使用する仏具は、できるだけ当派の正式な仏具(宣徳製品)の五具足<左から: 花瓶・ローソク立て・香炉・ローソク立て・花瓶>もしくは、三具足<左から: 花瓶・香炉・ローソク立て>、或いは宣徳色(黒に近いこげ茶)の丸型仏具を使用して下さい。また、一般焼香用の香炉も当派用のものを使用して下さい。
 供物も供物台(供笥〔くげ〕)を使用して下さい。供物を直にお供えすることはありません。

 真鍮製の鶴亀型の仏具や、透かし入り等の土香炉は、真宗大谷派(東本願寺)用の仏具です。また、真鍮製(金色・銀色)の丸型仏具も他宗派用です。
 仏具は当派に限らず、それぞれの宗派の正式な仏具を使用して下さい。

花(紙華[しか])について
葬儀場での荘厳壇や前卓(野卓)の花は花瓶に紙華(4本1組)を立てて下さい。櫁は使用しません
なお、紙華は白色の紙製で、銀色やビニール製のものは使用しません。
又、荘厳壇の中に装飾的に使用されている場合がありますが、これも間違った使用の仕方です。
ローソクについて
ローソクは白色か銀色で、イカリ型か棒型(主にイカリ型)を使用する。
絵入りのローソクは本来使用しません。
供物について
○ 供物は供物台を使用してお供え下さい
○ 当派で供物としてふさわしい物は、餅類・果物類・菓子類(落雁や饅頭)、干物類(干椎茸・昆布など。肉や魚貝類は干物でも不可)などです。

※ 生野菜、生米、肉・魚貝類は一切お供えしません
※ 供物はご本尊にお供えするもので、故人に対してお供するものではありません。遺影(写真)や位牌の前には一切お供えしないで下さい。なお、仏飯器での仏飯も不要です。

故人生前中の嗜好物を納棺される場合は、式中は別の所に置いておかれ、後に納棺して下さい。
※ 荘厳壇には、仏具・供物以外は置かない(遺骨容器も置かない)ようにし、すっきり荘厳しましょう。

燃香(線香を燃やす)について
当派では、いずれの勤行においても、線香は立てません。香炉に合う長さで折り、必ず横に寝かせます
白木の位牌について
浄土真宗では、いずれの場合でも位牌(黒塗り、繰り出し位牌)は使用しません。本来は紙に法名を書いたものを用いるのですが、近年、法名を書くのに白木の位牌に代わるべきものが無く、やむなく使用しておりますが、これも長くて忌明け(49日)法要までで、過去帳に記載するのが正式です。
 また、白木の位牌は単に故人の法名等を記載したものです。「位牌に故人の霊が宿っているから特に大切にしなさい」などという言い方は不適切ですので注意して下さい。

葬儀式次第について
 ※ 以下の式次第は、出棺勤行と葬場勤行を同じ場所で行うことに基づいて定めております。
 ※ 式次第については、事前に導師と司会者との打ち合わせを行って下さい。
■■■ 浄土真宗本願寺派葬儀式次第 ■■■
@、 遺族・親族・来賓入場着席(座)
A、 導師・諸僧(法中・結衆)入堂着席(座)
B、 一同合掌 ……<導師の動作に合わせて>……礼拝。
C、 開式のことば
       <葬儀次第についてのアナウンス例参照>
D、 「おかみそり」
   <生前中に「帰敬式[ききょうしき](おかみそり)」を受け、法名を拝受しておられる場合は除く>
E、 出棺勤行<仏壇の前か荘厳壇前(棺前)で葬場勤行に先立っての勤行。棺前勤行とはいいません。>
F、 葬場勤行<曲録に着席して行う>
 1) 三奉請[さんぶじょう]
 2) 導師焼香<アナウンス>
 3) 弔 辞<式文・弔辞等があれば行う>
 4) 表 白<曲録に着席して行う>
 5) 正信偈・念 仏・添引念仏・添引和讃・回 向
 6) 喪主・遺族・親族・来賓等焼香
   ※正信偈の「五却思惟之攝受[ごこうしゆいししょうじゅ]」の導師独諷[どくぎん]が終わってから焼香案内する。
    なお、一般会葬者の焼香も出来れば喪主焼香後が良い。
         <一同合掌 …… 礼拝>
G、 弔電披露 <司会者席にて行う>
H、 閉式のことば
      <葬儀次第についてのアナウンス例参照>
I、 一同合掌 ……<導師の動作に合わせて>……礼拝。
J、 導師・諸僧退出

 
 

※G弔電披露はJの導師退出後に行うこともある。
※喪主・葬儀委員長挨拶を行う場合は、Hの閉式のことば前かJの導師・諸僧退出の後、或いは火葬場に向かう出棺前に行う。
※密葬を済ませ、本葬を別の日に行った場合は、D〜Eは除く。
※喪主等の立札について――本来喪主は席を立って会葬者には立礼をしない。

■ 葬儀式次第のアナウンス
  1)一同合掌 … 礼拝の時のアナウンス例
 「ご一同様には、ご仏前(ご尊前)に向かわれ、合掌」
     ……<導師の動作に併せて>…… 「礼拝」
  2)開式のことばアナウンスの例
 「ただいまより、去る○○年○月○日にご逝去され、享年(行年)○○歳で、お浄土に還[かえ]られた(往生された)、故(俗名)○○○○様の葬儀を、浄土真宗本願寺派○○寺ご住職様のお導師により開式させていただきます」
※ 読経中の遺族等の焼香案内の時のマイクのボリュームは、あまり大きくしないで下さい。読経がしずらいことがあります。
  3)閉式のことばアナウンス例
 「以上をもちまして、故○○○○様の葬儀を閉式させていただきます」

  4)浄土真宗で使用しない言葉    《使用する言葉
  ・御霊前に向かって…  《ご仏前(ご尊前)に向かって…
  ・故人のご冥福を念ずる<祈る>  《故人のご遺徳を偲び哀悼の意を表します
  ・故人の霊安からんことを念じて(祈って)  【*使用しない】
  ・黙然合掌…礼拝  《合掌 … 礼拝
  ・ご回向をお願いいたします  《読経をお願いいたします
左側の用語は浄土真宗では使いませんので特に注意をして下さい。使用する場合は《使用する言葉》の方を使って下さい。

その他参考例<弔辞・式文等で浄土真宗で使用しない言葉と使用する言葉>
    使用しない言葉      《使用する言葉
  ・ご霊前  →  ご仏前、ご尊前
  ・ 魂  →  故 人
  ・永 眠  →  往 生
  ・幽明堺を異にして  →  お浄土<み仏の国>に生まれる
  ・草葉の陰から  →  お浄土<み仏の国>から(で)
  ・天国に行く  →  お浄土<み仏の国>に生まれる
  ・菩提を弔[とむら]って  →  如来回向の菩提心を訪[とぶら]って
  ・安らかにお眠り下さい →  感謝(哀悼)の意を表します

■ 焼香について
当派の正式な焼香の仕方は以下の通りです。
 @ まず1、2歩手前で一礼(一揖[ゆう])
 A 香炉の直前に進む
 B 香を1回だけつまみ、香炉に入れる
 C 合掌(念仏を称える)、礼拝
 D 1,2歩下がって一礼(一揖)

 浄土真宗本願寺派では、お香をお供えするという意味から1回だけ香をつまんで、いただかずに焼香するのが作法です。

※真宗大谷派では香を2回など、宗派によって作法は違いますので、浄土真宗本願寺派以外の方については、それぞれの宗派の仕方で焼香されたら良いと思いますので、他宗派の方に当派の仕方を強要することは必要ありません。
※葬儀中の焼香で導師の前に進んで行う場合、導師に軽く一礼して<導師は読経中ですので答礼はしません>、仏前に進んで焼香をするように事前に説明して下さい。
 なお、導師に向かって合掌・礼拝は必要ありません。

■ 喪主の葬儀中の立列(答礼)について
 葬儀は喪主を中心として、故人を偲んで仏縁を深める仏事でありますので、喪主や遺族が読経中に席を立って、一般会葬者の焼香時に答礼することはしません
 なお、会葬者に立列が必要な場合は、喪主に代わるべき親族の方がします。式中に会葬者に答礼(挨拶)が出来ないので、式後か出棺後に喪主や葬儀委員長が挨拶を行うのはそのためです。

■ 出棺について
 出棺時に故人の使用していた茶碗を割ったり、棺を回したりする風習が残っているところもありますが、これも俗信や迷信ですので浄土真宗(本来の仏教)ではふさわしくありません。

■ 清め塩≠ノついて
 葬儀会葬者に対する品物に清め塩≠付けたり、火葬場より帰った時に塩≠ナ清めることは、死・死者≠穢[けがれ]とする神道よりの考え方で死・死者=穢≠塩で清める行為は死者を冒涜し「いのちの尊厳」をも傷つけるはたらきをするもので、間違った俗習であり、仏教の教えからも反する行為でもありますので、特に浄土真宗の葬儀の場合には清め塩≠使用しないで下さい。
 なお、葬儀場に清め塩≠使用しない旨の看板を会葬者にわかるように掲示していただければ幸いです。又、会葬者用の清め塩≠使用しない旨のパンフレットを作成する予定です。

● 火屋[ひや]勤行

意 義
火葬場(火屋)で棺に点火する前に行う勤行を火屋勤行といいます。
※都合により火葬場に同行せず、葬場勤行に引き続きおつとめすることもあります。この場合でも灰葬勤行とは当派ではいいません。

● 還骨[かんこつ]・初七日法要

意 義
火葬場での収骨を終え、遺骨となって自宅及び葬儀会館等に還り、仏前に安置してつとめる勤行を還骨勤行といいます。
また、近年では、還骨勤行に引き続き、中陰法要の初七日法要を引き上げてつとめることが多くなりました。
荘 厳
仏壇のある場合
前卓上は、三具足=<左から: 花瓶、香炉、ローソク立て> で荘厳する。
・ 打敷は 白か銀色
・ 花は 赤色をさけた生花
・ ローソクは 白色
上卓
・ 打敷は 白か銀色(ある場合のみ)
※ 遺骨、遺影等は以下のように中陰壇に安置する。 中忌中の荘厳(仏壇あり)

 

仏壇のない場合 <自宅以外の場合も含む>
以下(左図もしくは右図)のようにご本尊を奉懸(安置)して、中陰壇を設け遺骨等を安置し、三具足で荘厳する。 中忌中の荘厳(仏壇なし)


※ 仏壇及び中陰壇の荘厳は四十九日の満中陰(忌明)法要まで上記とする

● 中陰及び満中陰(忌明)法要

意 義
中陰とは、亡くなった日から四十九日間のことで、その間に七日毎につとめ、特に七七日(四十九日)は満中陰(忌明)として丁寧につとめます。
 また、五七日(三十五日)で忌明とする所もありますが、四十九日で満中陰(忌明)とするのが正式です。
 尚、当派ではこの法要は追善回向の仏事ではなく、今は亡き故人を偲び、それを縁として仏恩報謝の懇念を深める仏事であります。
荘 厳
※ 仏壇及び仏壇のない場合も還骨・初七日法要に準ずる。
※ 満中陰後は中陰壇を撤去し、仏壇の荘厳は平素の荘厳にする。
※ 葬儀で使用した白木の位牌は過去帳に記載する。当派では黒塗りの位牌・繰り出しの位牌は用いない。

○世間一般では、四十九日の満日中(忌明)法要が三ヶ月になると、三月越しの法事はいけないと言われますが、これは「始終苦しみが身につく」という語呂合わせの迷信によるものですので、全く気にする必要はありません。
 ※ 一般には中陰期間は、ローソクなどの灯[あかり]や線香を絶やしてはいけないと、言われることがありますが、その必要はありません。火事の心配もありますので、お参りの時だけ灯りを付け、線香を焚きます。
 他宗派では、死者は亡くなってから四十九日までの間旅して最後に成仏すると説き、その間灯りを消すと死者が迷うと言われますが、浄土真宗では阿弥陀如来の救いによって、亡くなった方は、ただちにお浄土に往生し、仏にならさせていただく宗旨でありますので、灯りを一日中付けておいたり、故人への追善回向や追善供養をする必要はありません。

● 納骨(分骨)について

 納骨は適当な時期に各家の墓地及び納骨堂等に納骨(もしくは分骨)する。
 ※ 特に何日までに納骨しなければいけないという決まりはありません。
 尚、本願寺派の門信徒の場合は、遺骨の一部を宗祖親鸞聖人の御廟所の京都の大谷本廟(西大谷)に分骨(納骨)することもお勧めしております。方法等については所属の寺院に相談して下さい。
 又、墓地については、世間の迷信にとらわれずに浄土真宗の門信徒としてふさわしい墓地を建立されることが望ましく、墓建立に当たっても所属の寺院に相談して下さい。

● 仏壇について

 仏壇のない家にあっては、出来るだけ葬儀を縁として四十九日までに仏壇を迎えられることが望ましいのですが、必ず仏壇を迎えなければいけないことはなく、ご本尊(阿弥陀仏)のみ安置されても結構です。
 仏壇・仏具を取り扱っておられる業者については、当派の正しい仏壇・仏具を納入されるようにして下さい。
 その場合、町版といわれる一般業者製版のご本尊を仏壇のサービス品として付けられるのは間違いです。ご本尊は本願寺(西本願寺)より下付して頂きお迎えするのが正式です。ご本尊は別院においても取り扱い致します。
 ※ {仏壇の荘厳(飾り方)}参照

 最後に、葬儀全体については、間違った俗習・迷信風習が根強く残っていることが多く見られますので、特に浄土真宗の門信徒の方の葬儀には、前記の事項を十分に注意して執り行っていただきたく存じます。
 又、遺族の方々は、葬儀については初めての方が多く、わからないことも多くあると思いますので、不明なことは所属の寺院に訪ねて下さい。


◆ 資料より抜粋

● 葬儀について
もともと葬式とは宗教ではなく、習俗である。遠い昔から先祖が踏襲して行われてきた「風習」である。宗教とは、個人の選択が問われる精神の営みである。

□ 葬儀の目的
一般的には「死者に礼を尽くす、追慕の感情の現われ、霊に対する恐怖の感情、愛する者と、永遠の別れに際して、生前に充分にして上げられなかった思いからせめても死後の儀式を行なうことによって、償う追慕の気持ちと、霊を慰め、同時に、祟り障りを防ぐために行なう」とするのが今日にいたる目的である。

□ 遺骨崇拝・先祖崇拝
「霊」に対する供養心が「供養塔」を作り、その後遺骨を収める事により「遺骨崇拝」が生まれ、そのお骨を納める「墓参り」をする事により、「遺骨崇拝・先祖崇拝」となったものである。
□ 真宗として葬儀をどう受け取るか
不思議な縁に繋がった人と人との、人生最後の厳粛な「別れの儀式」であり、亡き人を縁として、改めて「生きて生かされる、生命の尊さを知らされる」場であり、掛けがいのない人生を、大切に生きる心を教えられ、亡くなった人の願いと、心を生かし、人生の真実、生まれてきた事の意義を問い掛ける場でもある。特に真宗の葬儀は、古くから「生死無常の知らせとして、亡き人を偲び、お念仏の教えに出会う仏縁とされている。

□ お釈迦さまの葬儀について
阿難の問い「世尊よ入滅されたら如何しましょう?」
釈迦曰く「わたしの葬儀は在家信者が執り行なってくれる、あなた方出家者は、葬儀など心配しないで修行に励みなさい……」
「上求菩提・下化衆生」を理想とし、出家者は父母以外は葬儀に一切係わらないとしていた。しかし釈尊が父「浄飯大王」を葬送された事が「涅槃経」にあると言う。今日でもわが国で見られる「肩入れの儀」が行なわれた事が見られる。また葬送の方法としては「地水火風鳥」葬が、世界共通の葬送方法であるが、「火葬の目的」は、火の持つ「払浄力」で、「死霊への恐怖」と、「汚れ」を払う力があると信じられて、広く用いられるようになる。

註:わが国での「火葬」の始まりは、奈良元興寺道昭」が最初とされ、以後持統天皇、文武天皇などが火葬されるも、主として天皇、公卿、貴族など上流階級に限られていた。時代が下がって一般にも受け入れられるようになったのは、江戸時代である。
元々仏教がわが国に伝来した時には、生きた人間の心の拠り所とした教えとして勧められ、僧侶は民衆に仏の教えを説くも、死者儀礼をせずとしていた。平安時代から鎌倉時代にかけては、まだ人の死を「儀礼化」されていなかったが、「三昧僧[サンマイソウ]」が携わっていたことがしられる。
その後禅宗によって中国から「儒教」の死者儀礼が伝えられ、行なうようになり、僧侶が葬儀に携わるようになる。
特に仏教が葬式と結びついたのは江戸時代からで、「宗門改制度」や「宗門人別帳」を定め、すべての民衆に強制し、「檀家制度」が出来たからである。
それまでは、宗教に関係なく「村の長老達」が、その地方に伝えられていた死者儀礼葬送の習俗習慣によて行なわれていたものである。
それが現在でも全国各地に「宗派に関係のない」習俗習慣として伝わっている。

註:ただし今でも南都六宗と言われる奈良の寺院では、父母の葬儀以外は、一切葬儀に携わらないとしている。

●真宗でも元々寺院では、生者に法を説く所であり、死者儀礼をしないとしていた、今日でも本堂で葬儀を行なわない寺があり、用いる場合は、本堂を葬場と見做すために、巻障子を閉めるとしているのである。

□ 神道と葬儀
「神道」という言葉は、用命天皇のときから「故事類苑」に見られ、古代から神道は「死」を汚れとして「忌」み、そのため奈良朝時代以後、死者儀礼の葬儀は仏教に任せて、神道は一切葬儀に係わらないとしていたが、明治新政府が出来、神仏分離から、神道も葬儀を行うようになった。

註:過去には天皇などが葬儀に携わった時、海水で沐浴したが、次第に塩を代用とするようになった。それが今日の「清め塩」である。

■ 「忌」と「喪」について
「忌」は、平安時代に定めた「延喜式の細目」に、「死の穢れは四十九日」と規定している。家族の死の不浄を持つ者は、49日の間、外の人と接触してはならないと定め、この49日の間、社会的に色々な行事を慎む事を強制された間を「忌中」と言うのである。

■ 「喪」とは
自発的に故人のために、自分の行動を慎むことを「喪」と言う。喪中は「明治7年太政官布告の(服忌令)に、たとえば父母・夫は13ヶ月、妻は6ヶ月というように期間が定められたが、忌は必然とするが、喪に服さないからといって、社会的に制裁される事はない。
註:本来は「喪中につきて」はなく「忌中につき欠礼」・どちら?

■ 最近の葬儀についてのいろいろ
葬儀場について:◎自宅葬儀が少なくなる。貸会場、家族葬、無宗教によるお別れ会。
還骨と初七日を一緒に勤行。◎収骨は一部だけ拾う、もしくは全て不要とする。

■ 親鸞聖人について
◆御誕生地
本派は「日野の里」、大派は「三室戸」 説
◆ 宗祖入滅の地について
御伝鈔に「長安馮翊[チョウアンフヨク]の辺[ほとり] 押小路[オシコウジ]の南、万里小路[マデノコウジ]より東[ひんがし]」とあるが、この地についていくつかの学説がある。
馮翊とは「右京区」の事であるが、学説には「右京区と・左京区」の両方に、「万里小路」があったといわれ、本派は、「右京区、押小路の南、万里小路より東」と第20代広如上人の時にここに善法院があったと確定した。
善法院は、弟尋有が住職していた寺であり、禅宗相国寺の地所であったのを、広如上人の時買い求めて角坊別院を建てる。
◆ 大谷派
 左京区の方だとして、「御池通り柳馬場の柳池中学校の角に「親鸞聖人御往生の地」という石標がある。
◆ 下京区西洞院通り五条上る
「大泉寺 親鸞聖人御往生の地」と石標がある。宗祖八十才の時、ここで「浄土文類聚鈔」を著わされた。
註:いずれにしても、「善法院」を示す確固たる資料が無く諸説があるが、尋有僧都が住職をしていた「善法院」で往生された事は間違いない。
◆ 火葬の地
御伝鈔:(鳥辺野の南、延仁寺に葬す)長安馮翊の辺……
本派:大谷の北谷(昭和12年に石標を建てる)
大派:東山今熊野(明治16年延仁寺を建てる)
◎ 宗祖の葬儀
勤行はなし 三昧僧によって鉢鉦を叩き、念仏のみを称える
改邪鈔に曰く。「某 親鸞 閉眼せば、賀茂河にいれて魚にあたふべし」と遺言、舎利崇拝を強く否定したが、火葬後、娘覚信尼は収骨し、吉水の北に小さな墓を建て、納骨した。それが次第に門弟達の宗祖に対する強い追慕の念から大きくなり、三代覚如の時に、寺号を下賜されて教団化されていった?
註:亀山天皇宣旨「龍谷山 久遠実成阿弥陀本願寺」
青蓮院の近く「吉水の地にあった宗祖の墳墓」が、第12代准如の時、幕府の命により、現在の西大谷に移る。その後改修して今日にいたる。

■ 蓮如上人の葬儀
臨終に際して、枕屏風に「中陰仏」を掛ける。
色衣、布袈裟、袴で正装、曲録に正座して、全門末に対して、御影堂に於いて遺骸の礼拝をさす。
葬儀には藁沓、白扇の使用、棺蓋名号、肩入れの儀、路念仏の依用、町蝋燭、六道蝋燭の依用、棺掛七条の依用。
勤行 調声:慶聞坊 帰三宝偈 早正信偈舌々
和讃 初重 無始流転ノ苦ヲステテ
   二重 南無阿弥陀仏ノ回向ノ
   三重 如来大悲ノ恩徳ハ
註:調声は御堂衆 和讃 門主の葬儀は現在も同じ
  勤行後 中啓と草履を捨てて帰ると……
  葬儀に(朱蝋燭)を用いる。
  一般に七条袈裟を用いるようになったのは12代准如より
  門信徒の棺掛け七条は、出家者と同一として見送るとする
 (現在でも用いるのが正式である)

■ 寺院の葬儀
通夜勤行を庫裏でする 出棺勤行は巻障子を開いて本堂で
葬場勤行は巻障子を閉じて本堂で
遺体は(正式には)外陣に (内陣に、特に礼盤の上に置く寺も多いが……)
納棺装束 色衣・五条・切袴・中啓・二輪念珠・納棺尊号
棺掛け七条・修多羅
後継者に(達書、弔慰状、内願院号、御香、供物、その他を教務所長または組長が伝達する事を伝えて置く)

◎ 仏事葬儀に関する雑学
□ 「法名」と言う語の始まり
中国の「元照律師ー親経書」の中に、[阿弥陀仏の昔、国を捨て家を出て、「法名」を「法蔵」と号し、四十八の願を発する] とあるのが語源の始めとされている。
□ 「釈」の字の始まり
中国の東晋時代に「道安」と言う僧侶がいた当時僧侶はみな、必ず師匠の字を一字「例:竺○○」と付ける習慣があったが、全て釈尊の弟子ならば「釈(釋)」を付けるとしたのが始まりと言う。
□ わが国では
元々出家したら「法名」だけであったが、明治五年に全僧侶に対して、「俗姓」を称するよう定められて一般人と同じにしたものである。
□ 喪服の始まり
文武天皇が大宝元年八月に「僧尼令」を定め、僧尼が俗服を着たら百日間の苦役に罰するとした。それ以後僧尼は「墨染めの衣」を用いるようになる。
同時に「忌服令」を定め、「男子は黒五つ紋付けに袴」「女子は白無垢に白帯」と定めていたが、戦後黒の五つ紋付けの染め抜きとした。なお今日にように女子が黒の洋服を用いるようになったのは戦後である。紋の無いものは喪服と見做さなかった。
□ 本来は用いない用語「告別式」「○○法師」
わが国で「告別式」と言う語を初めて用いた人は、明治34年に没した「自由主義者」の中江兆民。無宗教で行い、本人の遺言により葬式をせず「告別式」して知人に送ったのが始まり。
現在は「葬儀式」は身内の者だけで、「告別式」は取引先または知人が参拝としている。
地方寺院で「○○山○○寺第○○世住職○○院釋○○法師葬儀告別式」と白木の札を、入口に建てる寺も間違いである。
□ 位牌
元々は{神位を記す牌}と言う意味の物で、仏教に関係がなかった物であるが、中国において仏教が伝わる以前から儒教の家で、先祖や両親の存命中の官位や姓名を書いて「神霊に託す」習慣があった。これが宋の時代に禅宗の広まりとともに用いられ、「木札に戒名」を書くことにより、そこに「霊・魂」が宿るとして、位牌に供物を供え、経を読む事が始まり、わが国に伝えられ広く行われるようになる。真宗は教義上否定しているが、葬儀には用いている?

(於:声明講習会H18.9.6/山崎昭壽師)
 
 


◆ 社葬式次第(一例)

 社葬をする場合の参考として式次第の一例を紹介します。
(葬儀式とは別の日時。午後1時開式、2時半閉式としての例)

 ○○○○会社社葬
浄土真宗本願寺派 △△寺
住職 □□□□
式 次 第
10時   30分 葬儀委員集合 全体ミーティング
・葬儀委員長より全体の指示
・各係責任者は係員を点呼
・服装のチェック、胸章,リボン,白手袋等の配布
10時
  45分
各係員配置
準備確認
・各係責任者より分担配置について現場説明・備品の確認
11時
  00分
食事・休憩所にて食事
11時
  30分
各係員配置 ・各係責任者が再度確認
・葬儀委員長へ最終報告
11時
  50分
出迎え準備 ・司会:整列のアナウンス
・出迎え出来る社員は正面に整列
12時
  00分
遺族・遺骨到着 ・出迎え
・遺骨,法名(位牌)安置
・導師・諸僧出迎え、控室等に案内
12時
  10分
遺族集合
式次第説明
・葬儀委員長・遺族・葬儀委員は荘厳壇(葬儀壇)前にて集合写真撮影
・司会:式の進行(式次第)を説明。
・説明後休憩
12時
  20分
受付開始 (受付係の一部は常にスタンバイしておく)
・会葬者出迎え、来賓確認後、控室等に案内
12時
  45分
遺族・来賓着席 ・司会:開式時間等アナウンス
・葬儀委員は式場入口で来賓を出迎え
・来賓入場後に着席
・会葬者全員を案内し着席
12時
  50分
前説・司会:アナウンス
12時
  55分
導師・諸僧入堂 ・司会:アナウンス
・まず役僧一人が入堂、キンを打つ間に導師・諸僧入堂
13時
  00分
開式
読経
導師焼香
・司会:「ただ今より○○○○会社○○○○長、故○○○○様の社葬を執り行います」
・導師・諸僧読経
・転座し導師焼香
13時
  10分
式文・司会:「葬儀委員長、○○○○○様」
13時
  15分
弔辞 ・司会
「○○○○様」
「○○○○様」
「○○○○様」
13時
  30分
弔電・司会:弔電披露
13時
  40分
読経・導師・諸僧読経
13時
  45分
指名焼香・読経中、喪主,遺族,来賓ら指名者は荘厳壇前で焼香
13時
  55分
一般焼香・葬儀委員長,喪主,葬儀委員らは所定の位置へ
・会葬者全員焼香
14時
  20分
導師・諸僧退出・司会:ナレーション
14時
  22分
葬儀委員長挨拶
喪主挨拶
・司会者が紹介後、葬儀委員長挨拶
・司会者が紹介後、喪主挨拶
14時
  30分
閉式 ・司会:ナレーション
・遺族・遺骨・法名(位牌)の帰邸、葬儀役員全員で見送り
14時
  40分
後片づけ・後片付け
・終了後、葬儀委員長より挨拶
・解散

以 上


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